こなすの部屋

社会学という視点から、暮らしや健康について考えたことを記したページです。何気なく当たり前だと思っていることに、「ちょっと待った!そうではないのではないか」と疑問を投げかける、そういう態度が「社会学的」だと思います。今日の医療や福祉に関心のある方に気軽にのぞいてもらいと思います。

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Sun, May 31, 2009

意味のないメタボ対策

 先週ボストン留学中の疫学専門家の話を聞く機会がありました。彼は、厚生労働省がん研究助成金による指定研究班「多目的コホートに基づくがん予防など健康の維持・増進に役立つエビデンスの構築に関する研究」という研究班の一員で、最新のデータを紹介してくれました。研究の概要は以下のHPで見られます。

http://epi.ncc.go.jp/jphc/

 これは1990年から2007年まで成人を対象にしたコホート研究で、いろいろなことを研究対象としていますが、研究テーマのひとつとして、メタボリックシンドローム対策がどれほど生活習慣病のリスクを減らすかということを示そうとしたそうですが、しかし、そこで明らかになったのは、メタボ対策は、一部の虚血性循環器疾患を除いて、がんや虚血性循環器疾患一般のリスクの削減には寄与しないということなのでした。

 逆に、メタボ対策一辺倒では、肥満を伴わないハイリスク・グループが見逃されてしまい、そういうグループ、すなわちメタボ非該当者でハイリスクの人たちが日本ではメタボ該当者よりも多く存在するということでした。

 そして結論としては、「日本に多く存在する高血圧者や喫煙者への対策の方が、メタボよりも大きな効果が期待できる」ということでした。

 厚労省は2006年に、特定検診・特定保健指導を掲げ、メタボを基準に健診して、5年後に評価してメタボ対策を達成できなかった保険者には、ペナルティとして保険料を削減するとしていたと思います。メタボ対策が、実はさほど意味がないものだと知ったら(しかも厚労省の助成研究で)、どの様な対応をするのでしょうか。間違えはなかったというのでしょうか

※写真は今が山で盛りのフジ

作成者 conasu [ コメント : 0]

Sat, May 30, 2009

犠牲者非難

 初めての渡航歴のある新型インフルエンザ感染者の第1号になってしまった高校生、およびその高校に、非難の電話が多数あったということです。病気になった人を非難することは、世の東西を問わず存在し「犠牲者非難(victim blamig)」と 言われています。

 たとえば、ある国では、つい最近まで、女性はハンセン病にかかると生きたまま焼かれていたというところもあったそうです。ハンセン病やHIV/AIDSになると女性は離婚されるというのは、多くの国でよくある話です。

 日本で糖尿病や高血圧を「生活習慣病」というのも、なった人の生活習慣が悪いからだと非難する意味を含んでいると思います。(ちなみに「生活習慣病」というのは厚労省が作り出したお役所言葉です)

 最初に検疫間が防護服を着て、インフル疑いの患者のそばにいる画像を見たとき、当然、犠牲者非難が起こると思い、このブログでも日本はハンセン病やHIV/AIDSの負の歴史から何も学ばなかったのだろうか、と問題提起しました。案の定ですね。

 手洗いとうがい、咳エチケット、具合が悪くなったら医療機関に受診、必要な薬を飲み、治るまで学校や職場を休む。最善と考えられることをするということで、一般市民としてはもう十分です。不必要に怖がって、右往左往したり、余計な憶測をしたりすることはないと思います。

 タミフルをあれだけ叩いてきたマスコミが、今回は随分タミフル使用に寛容なのも変だと思います。感染者の近くにいた医療者に予防的に処方したと言うのは、どう考えてもナンセンスとしか思えないのですが・・・

※写真は 朴葉みそに使う ホオノキの花

作成者 conasu [ コメント : 0]

Tue, May 19, 2009

本当の危険

 新型インフルエンザが日本では現在最大の危機となっているようですが、感染者が日本とは比べ物にならないくらいたくさんいるアメリカでは、もうインフルエンザの話題は廃れてしまっているように見えます。その理由のひとつは、もしかしたら、日本はインフルエンザにしか危機意識を持たないほど平和で安全だからなのではないかと、ふと思いました。

 昨夜から今日にかけての大学からのメイルでは、5月18日の夕方5時ごろに学生寮での発砲があり被害者が病院に運ばれたとか、同日の夜11時ごろには大学近辺の道を歩いていた学生が強盗に遭ってナイフを突きつけられ、現金とiPodを奪われたといったメイルが回ってきました。

 確かにアメリカは銃社会で、年末にミュージカルを見るために娘を二人連れてダウンタウンに行ったときも、電車から降りてから劇場まで、デパートや専門店の立ち並ぶ通りを抜けていこうとしたところ、突然警察官がやってきて、発砲事件があったから迂回するようにと言われました。驚いて下の子を抱っこして急いでわき道に逃れましたが、なんとも怖かったです。

 ニューヨークにいた頃も、住んでいるところは郊外の静かな場所でしたが、所属していた大学の近辺は、概して治安がよくないと言われるところでした。地下鉄から降りると、血を流した人がうずくまっているのを1回だけですが見たことがあります。

 場所によってなのでしょうが、アメリカでは日本と比べて結構近いところで頻繁に危険なことが起きているので、重症性の高くない病気に対しては、危機意識が薄くなっているのではないかと思います。

 日本の状況を見ていると、そんなことに大騒ぎしているほど平和なのだから、それもいいのかもしれないと思ってしまいます。でも、もし本当にもっと危険なことがあって、それがこの騒ぎによって隠蔽されているのだとしたら、実に恐ろしいことです。

※写真は記事とは関係ありません。 今は盛りのスズランです。

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Sat, May 16, 2009

新型インフルエンザと結核

 アメリカでは新型インフルエンザ(H1N1)の新患数は増えているものの、致死的ではないmild diseaseと考えられるようになり、最も患者数の多いテキサスでは一時800校以 上の学校が閉鎖されましたが、マサチューセッツ州教育委員会からは、症状のある生徒は自宅待機にするが学校閉鎖はしないという方針が、5月5日に出されました。

 娘の行っている学校の隣の小学校では、5人が新型インフルエンザと診断され、風邪様の症状で20人が欠席している報告がありました。また、何人かは親が罹患を心配して学校に行かせないでいるそうです。この学校の全校生徒は670人ですが、90人が3日前まで休んでいて、2日前は70人に減ったということでした。

 二人のお嬢さんたちをその学校に通わせている友達がいるので、心配してメイルを出したら、確かに新型インフルに罹った子がいることは学校からお知らせがあったけれど、彼女は子どもたちを普通に通わせているということでした。ちょうどこの時期3年生から8年生まで、MCASという全州統一試験があるのですが、それも変わりなく行われているということでした。

 こんな新型インフル騒ぎの只中で、この騒動に警告を発しているスウェーデンのカロリンスカ研究所のハンス・ロスリン(Hans Rosling)教授のビデオをネットで見つけました。彼は公衆衛生 の大家で、国際保健や疫学統計の専門家です。彼は次のようなメッセージを送っています。

 新型インフルエンザで31人の人が亡くなっているのと同じ期間に、結核では63,000人人が亡くなっている。この間メディアのニュースは、新型インフルエンザが250,000件であるのに対し、結核は6,501件である。「ニュース/死の比」というのがあったら、新型インフルエンザは1人の死に対して8,176のニュース報道で、結核は0.1に過ぎず、8万倍の差がある。

 ロスリン教授は新しいものにだけすぐ飛びつく世界の趨勢、特に先進国の状況に物申しているわけですが、勇気ある行動だと思います。日本の新聞やWebを見ると、日本でも政府の対応に批判的意見をしっかり言える方々が出てこられているので頼もしい限りです。

(参考)

Brookline TAB, Thursday, May 14th, 2009, P1, P.11

http://www.gapminder.org/videos/swine-flu-alert-news-death-ratio-tuberculosis/

朝日新聞、私の視点、2009年5月14日

※写真は記事とは関係ありません。
芽吹きのコゴミです

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Sat, May 2, 2009

豚インフルエンザ

 先週来、アメリカでも豚インフルエンザが話題になっています。乳児一人が亡くなったという報道がされましたが、ボストンの市民生活は特に変わった様子はなく、当然マスクをしている人などいません。ニューヨーク在住の知人も、いつもと変わらないといっていました。

 日本の様子を見ていると、感染症に過剰に反応しているように思えて仕方がありません。成田では、防護服を着た検疫官がメディアに写っていたと聞きます。一般の人の恐怖心をいたずらに煽っているようにしか思えません。

 感染者を入国のところでチェックするという「水際作戦」とやらは、どこの国もやっていなくて、WHOも推進してはいないそうです。そもそも豚ウイルスは、人から人への感染力の低い弱毒だともいいます。治療法が確立された後も、世界に取り残されて延々と続いたハンセン病隔離の歴史をふと思い浮かべてしまいます。
(HIV/AIDSの初期の感染者に対しても同じ対応でしたね。)

 普通のインフルエンザでも、日本で1年に数百人くらい死亡します。今回の場合、たしかに新型で人々は免疫を持っていないので、感染すれば多数の死亡者も出かもしれず、最大限の注意はしないといけないと思います。しかし、アメリカではできるだけ日常の暮らしをするようにというのがすすめられているようです。

 日本において、本来やらなくてはいけないのは、感染症に十分な治療ケアができる設備のある病室と専門家を用意することだと思います。ただ、それでなくても病院は赤字、医師・看護師不足で大変だといいます。しかし、「水際作戦」とか小手先のことをするのではなくて、保健医療提供の体制を、きちんとお金をかけてしっかり作っていった方が、結局は人々の安心につながるのではないでしょうか。

※写真は記事とは関係なしです。 日本の桃畑。=桃源郷(^^

作成者 conasu [ コメント : 2]
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